トップモノづくりパートナー紹介実はあの広告も……高いイメージ再現力でクリエイティブを支える製版・印刷業の専門集・・・
株式会社日光プロセス
代表取締役 原田一徳さん(写真右)
1953年に大阪で創業し、製販・印刷業を手掛ける株式会社日光プロセス。広告ポスターや電車内の中吊り広告、さまざまなノベルティグッズなど、同社のプロダクトを街なかで目にする機会はたくさんあります。
初回の提案から社内で試行錯誤を重ね、完璧により近い状態からスタートさせるのが日光プロセスの特徴。高品質を追い求め続けたことで製版業界において唯一無二の存在となり、大手広告代理店からも厚い信頼を獲得してきました。
誰もが知っている広告ポスターなどの製作実績を見ると、個人のクリエイターが気軽に相談できるのか心配になるところですが、実際はどうなのでしょうか。代表の原田一徳さんにお話を聞きました。
もちろんあります! クリエイターの方からご相談をいただいて、その都度オーダーメイドで製作していくのが当社の主な仕事です。
例えば、今年の6月にリリースされたRADWIMPSの「カタルシスト」というシングルの完全生産限定版は「汗ジャケ」と呼ばれているものです。汗をイメージした水滴をフィルムで表現するという難題に、当社の社員が一生懸命取り組みました。
最初は水滴をシールで表現しようとしていたんですが、納得できる仕上がりにならない。途中で、シールからフィルムへとメディア(素材)を変更するというまさに一からやり直しの事態になりました。いかに丸みを持ったリアルな水滴に近付けるかが最大の難関でした。試行錯誤の末、イメージ通りの水滴フィルムができ、クライアントにもとてもよろこばれました。
成田国際空港第1旅客ターミナル中央ビルの中にある「ナリタ北斎プラザ」という場所の壁面装飾は、墨田区を中心としたチームで取り組んだ仕事です。墨田区を拠点に活躍する、デザイナーの高橋正実さんからご相談いただきました。
葛飾北斎の作品をコラージュした23枚のグラフィックパネルと、30mに渡る金銀の壁面を泳ぐ金魚の絵で構成された装飾は、伝統を踏まえながらもインパクトのある彩度が必要とされました。平均して1枚のパネルに5〜6作品をコラージュするのですが、作品の製作年代が異なることもあってスキャニングしたデータの色味はバラバラ。色味や彩度の調整を重ね、合成の感じをなるべく減らして華やかな印象に仕上げていきました。
他にもさまざまなご相談を受けて製作をしていますが、なかなか自社の名前を明かせないケースが多いんです。心の中では「これ、うちの会社がつくってんねん」って言ってますけどね(笑)。
ご相談から商品になったもので特に印象に残っているのは、「干支TOYカード」というものです。
毎年、あるデザイナーさんと「おもしろい年賀状をつくろう」と話し合って形にしてきたのですが、これを売り物にしたら?という話が出てきたんです。
商品化にあたってクリアすべき課題はたくさんありましたが、機能面(面白さ)をそのままにコストを下げるために、加工を単純化するなど技術面での工夫を重ねました。結果、一般的なレターセットよりもやや単価が高くはなったのですが、想定以上に売れたんです。
時代の流れもあって社内でもコスト削減を常に考えてきましたが、面白さを重要視した干支TOYカードが売れたことで、お客様に価値を感じていただければきちんと商売として成り立つのだと実感しましたね。
クリエイターさんの表現したい気持ちをメディアに表現するのが、当社のモノづくりです。当社は、私の祖父が独立して始めた会社です。初代から「良品」へのこだわりを受け継いでいます。
ガラスや木材、石こうボード、もちろん紙、和紙、フィルム、布などさまざまな媒体に色表現を施します。色味や光の表現力に対して強いこだわりを持っているクリエイターさんと、お仕事を数多く経験してきました。これまで、化粧品、電機、飲料メーカーの広告などで磨いてきた技術力には自信があります。
もうひとつの強みが、現場の実現力です。何度も試作を繰り返し、表現するメディアが違っても均質な発色を実現できます。
同じデザインで、別のグッズをつくりたいといったご相談も多いですね。社内で画像作成を担当する部門の照明は、お客様が目にするシーンに合わせて調整し、最終的な見え方にも気を配ります。
基本的にメールか、もしくはこの記事を見たとお電話いただければ対応可能かと思います。当社は営業担当がお客様の思いをくみ取って、そのイメージを現場の技術者に伝わる言葉にする訓練を積んでいます。
具体的に仕様が固まっていなくても構いません。「こんなものをつくってみたい」「こんなことを伝えたいけど、どんな形にしていいかはまだ見えていない」。そのくらいの漠然とした感じでも大丈夫なので、まずはお話いただければと思います。
取材写真:鈴木 潤
フリーライター。周囲の人や町の魅力を言葉で誰かに届け、私のあずかり知らないはじまりを作れたらと思います。明日が少し楽しくなるきっかけの時間「旅する図書館」というサロンをさまざまな場所をお借りして開いています。https://www.facebook.com/travelinglibrary.ultreya/