トップモノづくりパートナー紹介試作工場と発信力が引き寄せる「ここでしかできない仕事」
2018.09.05
試作工場と発信力が引き寄せる「ここでしかできない仕事」
株式会社安心堂
専務取締役 丸山 有子さん
1974年に設立された安心堂は、パッド印刷と、シルクスクリーン印刷を中心に手掛ける印刷会社。創業ほどなく足立区に拠点を構え、今に至ります。「水と空気以外、形あるものにならなんでも印刷できる」というパッド印刷は、印刷面に曲面や凹凸があっても印刷できることが大きな特徴です。
長年の創意工夫で「印刷業界の駆け込み寺」という評判が立つほど、大手広告代理店やメーカーから多くの相談が寄せられている同社。これまで世の中になかったものをつくりたいというクリエイターの想いが先行し、他社では実現不可能とされた案件が持ち込まれることも多いそうです。難しい案件にチャレンジすることで対応力を磨き、少量多品種が求められる時代を生き抜いています。
専務取締役の丸山有子さん、有子さんの父であり会長の丸山寛治さんはブログやネットTV、様々なインタビューで印刷の魅力を発信し続け、新たな可能性を拓いているのも印象的です。現在、実務面を切り盛りしている有子さんに話を伺いました。
御社では、どのようなモノづくりがお得意でしょうか。
パッド印刷とシルクスクリーン印刷です。パッド印刷とは、シリコンゴム製のパッドを使用し、凹版（印刷部分が凹んでいる版）からインキを拾い、転写する印刷方法です。凹面・凸面・曲面など、あらゆる形状の立体物へ印刷できるのが最大の特徴です。本物の米粒にCDリリースの広告を印刷したこともあります。
当社は、会長が「手動式小型パッド印刷機なんでもくん」を発明しており、販売もしております。
曲面の印刷も得意なパッド印刷。オリジナルロゴを入れたりといった相談は多い
米粒に印刷された広告文！
シルクスクリーン印刷は、アルミなどの枠に紗（網目状に織った粗い布）を張った版を使用し、スキージーというゴムベラを使って印刷します。他の印刷方法よりも厚盛ができるので、ボリューム感のある印刷ができます。紙や布など、平面の印刷が得意です。
クリエイターや他社から、モノづくりに関する相談を受けたことがありますか。
「絵本を作りたい」というご相談だったのですが、普通の絵本ではなく、ライトを本の中に組み込み、読み進めながらライトを点けたり消したりしたいという内容でした。
完成までは至らなかったのですが、初めてものづくりにチャレンジしたいという方で、トータルコーディネートのご相談でした。当社は、さまざまな業種とつながりがあるので、知り合いのプラスチック射出成型を小ロットから受けてくれる会社や、製本会社に私が直接相談に行きました。
他にも、クリエイターの方が手描きで一つずつ製作してきたグッズを、ある程度量産したいというご相談があったり、デザインフェスタなどのイベントで配るノベルティー製作だったりと、さまざまなご相談を受けています。
印刷の依頼を受けた中で、印象的なエピソードはありますか？
あるプラスチック成型の町工場から、「Worldclock」という時計への印刷の依頼が来たんです。担当の方と話を進めていくうちに、その製品の製造を町工場に依頼した大元のクライアントは、数年前に当社のオリジナルパッド印刷機「なんでもくん」を購入されたお客様だったことがわかりました。米国ロサンゼルスから日本に帰省した際、当社に直接来社して購入してくださったので、とても印象に残っていました。
その方は米国に戻って、オリジナルグッズの製作とともに「なんでもくん」を使った試作を繰り返したそうです。いよいよ量産段階という時に、プラスチック成型の企業に相談を持ち掛け、そこから当社に大量印刷の依頼がきたという流れです。
「なんでもくん」を通して一度結ばれた縁が、下町の町工場の連携でもう一度つながったのは不思議でした。商品開発とまではいきませんが、一緒に作品を作っているような気持ちになれてうれしく思いました。技術的にはとても難しい印刷でしたが、達成感もありとても楽しかったのを覚えています。
WORLD CLOCK http://www.masafumiishikawa.com/worldclock/
余談ですが、そのロスからいらしたお客様は「海外輸送にはコストがかかるので自分で持って帰りたい」と「なんでもくん」を分解し、スーツケースに詰めて帰りました。デジタルの印刷機は、プロでないと解体なんて無理ですよね。アナログの良さがこんなところでも発揮されるんだと、大変驚きました。
クリエイターが御社に相談できる機会はありますか？
製作のご相談は随時受け付けています。来社いただけそうな日をお電話またはメールでご連絡ください。
また2016年から、印刷をもっと身近に感じてほしいという思いで、個人の方を対象にした「試作工場」という会員制のプリンティングファクトリーを運営しています。「なんでもくん」やシルクスクリーン印刷機を使い、プロの指導の下で印刷ができます。
オリジナルのTシャツを作る方や、お誕生日プレゼントを作りたいという方もいました。試作工場ではオープンファクトリーやワークショップなども開催しております。ぜひ、お気軽に足をお運びください。
株式会社安心堂
住所：〒123-0872 東京都足立区江北3-21-6
TEL：03-3896-6181
FAX：03-3896-3265
代表者名：代表取締役 丸山 幸子
従業員数：4名（2018年4月現在）
創立年：1974年
業態：成形物への印刷（パッド印刷・UV印刷・スクリーン印刷）
http://www.nandemokun.net/
取材写真：鈴木 潤
この記事を書いた人
フリーライター。周囲の人や町の魅力を言葉で誰かに届け、私のあずかり知らないはじまりを作れたらと思います。明日が少し楽しくなるきっかけの時間「旅する図書館」というサロンをさまざまな場所をお借りして開いています。https://www.facebook.com/travelinglibrary.ultreya/
