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2018.02.07
つながりが生み出したクリエイター専用工房「交場」で生まれる、新しい発想のものづくり

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株式会社西川精機製作所
代表取締役 西川 喜久さん

金属のレーザー加工から切削や組み立てまで、ワンストップサービスで試作・製造を行っている町工場、西川精機製作所。表面処理(メッキ)用冶具や、医科学用研究機器製造で技術力を磨き、多方面から寄せられる相談に応えてきました。

「下町のものづくりコンシェルジュ」として幅広く活動する同社工場の一角に「交場」という工房ができたのは、2015年のこと。クリエイターや西川精機の社員が持つ知識や技術、情報を交換し合うことで、新しいものづくりができる場所です。今回は「交場」が生まれた経緯や、そこから生まれたプロジェクトについて、同社の代表を務める西川喜久さんに伺いました。

自社のロゴ入りクリップが指し示すのは「下町のものづくりコンシェルジュ」という肩書き

自社のロゴ入りクリップが指し示すのは「下町のものづくりコンシェルジュ」という肩書き

「交場」が生まれたきっかけについて教えてください。

2010年、私たちの会社が東京都の「産学イノベーション事業」に参加したことがはじまりでした。この事業の主目的は「メーカーの自社製品に大学側でデザイン要素を加え、新しいものを生みだすこと」だったのに、うちには自社製品がありませんでした。

ですが、BtoBに注力し、業界のことしか知らない自社が変わるチャンスだ。という直感が捨てられず「うちには金属を一貫して加工する技術や知識がある。これがうちの製品です!」と、都の担当者に直訴しました(笑)。熱意を買ってもらえたのか、特例で参加が認められ、東京芸術大学との共同製作につながりました。

実際始まってみると、大学教授や学生がイメージすることは、私たちが思いもよらないことばかり。最終的な置き場所はともかく、そもそもどこでつくるんだ。っていう大きさのオブジェとか……。それを形にしようと試行錯誤するのは、とにかく面白い経験でした。

事業は1年で終了しましたが、その後も縁がつながって、卒業制作もよく手伝いました。ある研究室のドアには、当社のチラシが貼られているらしく、今でも学生から直接会社に問い合わせが来ます。産学連携という言葉が似合わない、フランクな感じがいいですよね(笑)。

ところが、学生は卒業すると、設備の整った学内の施設を使えなくなると知りました。創作を続けたくても、初期投資の大きさから独立に踏み切れない学生が多いと聞き、それなら、うちの工場の一角を彼らの作業場として開放しようと思ったんです。それが「交場」です。

「交場」に置かれた、クリエイターたちの工具。だんだん増えてきていると西川さんは笑う

「交場」に置かれた、クリエイターたちの工具。だんだん増えてきていると西川さんは笑う

西川さんの積極的な姿勢が、プロジェクト参加、そして交場の新設につながったんですね。

先代から「案ずるより産むが易し」という考えを受け継いでいて、とりあえず、自分が動けるなら動いてみようと思っています。それ以降、多くのプロジェクトに携わることになりました。

自社にできることは限られていますが、様々な分野の一流と出会ったおかげで、協力して多くのことができるようになりました。バラバラに存在していた関係がある日つながって、思わぬご縁が広がることもあります。「交場」でも、クリエイター同士不思議な出会いが生まれていて、一流同士は、違う場所にいても出会うものなんだと感じています。

福祉分野のプロジェクトにも力を入れる西川さん。車いす用のボーリングスロープは、誰もが一緒にボーリングを楽しめるように開発した

福祉分野のプロジェクトにも力を入れる西川さん。車いす用のボーリングスロープは、誰もが一緒にボーリングを楽しめるように開発した

交場から生まれた、「交場プロジェクト」の概要について教えてください。

「交場プロジェクト」は、異分野の専門家が共同研究できる場づくりを目的として、東京芸術大学の学生や若手デザイナー11名とともにはじめました。「交場」でアイデアを出し合い、作品製作だけでなく、商品化・販売までを後押ししています。私たちは、クリエイターのイメージを汲み取って、実際形にするためにはどうしたらいいかを考え、アドバイスするコンシェルジュ的役割を担っています。

2016年10月には、プロジェクトメンバーが「交場」でつくった作品の展示会「日常になかった金属のカタチ」が南青山で開かれました。作品づくりのかたわら、告知から集客まで行うメンバーの主体性に感動しましたし、リーフレットやウェブサイトには英訳がつけられていて、「自分たちの作品は世界に通用する」と自信を持って表現している姿にも感銘を受けました。その製作を、自社がサポートしていることがうれしかったですね。

展示会「日常になかった金属のカタチ」には500人近い来訪があり、展示作品の商品化も進んだ

展示会「日常になかった金属のカタチ」には500人近い来訪があり、展示作品の商品化も進んだ

「交場」ができたことで、社内に影響はありましたか?

一番の変化は、社員が「お客様の顔」を想像できるようになり、モチベーション向上につながったことです。

私たちは、これまでBtoBの仕事しかしていなかったので、褒められることはもちろん、よほどのことがなければ、叱責されることもない。工場にいれば、外部の方と話す必要がなかったんです。

なのに、ある日突然、優れたクリエイター、言葉を選ばず言うと「ちょっと変わった人たち」が工場に出入りし始め、彼らにアドバイスを求められたり、手伝ったりすることになった。最初は戸惑ったと思いますが「交場」発の作品が賞をもらったりすると、作品を手伝った社員もうれしいものなんです。自分の仕事の先にも人がいるという当たり前のことに、彼らが気付けたのは大きいです。

「交場」を使わせていただくにはどうしたらいいですか?

まず、当社までご連絡ください。現在、製作中の利用規約に賛同いただくことが条件で、使用料は無料です。これから床を塗りなおしたり、作業を邪魔しないための壁を新設したりと、さらに使いやすくなるよう変化させていく予定です。

1964年に墨田区京島で創業、その後江戸川区と、一貫して東東京エリアが拠点です。オススメの点はありますか?

東京23区の住所を確保した上での、生活コストの低さは間違いありません(笑)。私たちのプロジェクトは、都心の大企業とも東京西部の大学とも深く関わります。JR総武線・総武快速線、都営新宿線が使えるのは便利ですね。

あと、江戸川区はファミリー世代に人気のエリア。家庭を大切にしながら働きたいという、優秀な技術者が結構住んでいます。プロジェクトを進める上で助かっていますね。

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交場
アート・デザイン・町工場が融合する、クリエイターへ開放されている専用工房。金属加工を得意としています。クリエイター、西川精機の社員が持つ知識や技術、情報を交換、共有し、新しい発想のものづくりができる場として、作品の商品化までをバックアップする。
http://www.coba-meets-nss.com/
電話:03-3674-3232
メール:info@nishikawa-seiki.co.jp
〒132-0031 東京都江戸川区松島1-34-3

取材写真:イシバシトシハル

この記事を書いた人

岡島梓

フリーライター。周囲の人や町の魅力を言葉で誰かに届け、私のあずかり知らないはじまりを作れたらと思います。明日が少し楽しくなるきっかけの時間「旅する図書館」というサロンをさまざまな場所をお借りして開いています。https://www.facebook.com/travelinglibrary.ultreya/