トップモノづくりパートナー紹介硬質ゴム「エボナイト」で自主製品開発に取り組む、日興エボナイト製造所
楽器のマウスピースや万年筆などに使われるエボナイトは、堅牢で狂いが少なく、プラスチックとは違う滑りにくさと温かみを持つ魅力的な素材です。現在、このエボナイトを製造する国内で唯一のメーカーとなったのが、1952年創業の株式会社日興エボナイト製造所です。
同社は、エボナイトのカラー化・マーブリング化に成功。その技術を投じた万年筆をはじめとするオリジナル製品を開発するなど、エボナイトの魅力を活かした製品作りに取り組んでいます。世界的にも、エボナイトの製造から加工販売までを手掛けられる企業は数社しかなく、世界各国から注文が届くことも珍しくないそうです。
エボナイト加工品やカラーエボナイトを、文具メーカー、めがねフレームメーカー、ハンコメーカーから材料として供給できないかと問い合わせをいただいたことがあります。また、当社で現在力を入れているオリジナル万年筆は、デザイナーと他社との協業なしには完成しませんでした。
リーマンショックの影響で売上が激減し、危機感から東京都立産業技術研究センターの商品開発講座に参加しました。帆布製のバッグブランド「シライデザイン」を手掛ける白井要一先生が講師としてアドバイスをくださり、当社ならではのプロダクトとして、オリジナルの万年筆作りに取り組もうと決めました。
旧知の万年筆職人の方に製造を依頼し、苦労の末、ペン先メーカーを見つけ出すことができました。ようやく体制が整い、当社独自のカラーや模様が味わえるエボナイト万年筆が完成しました。
墨田区の「すみだ地域ブランド戦略」から2009年に「典型プロジェクト」という試みがスタートしました。高い技術を持つモノづくりの現場から、原型的な意匠を見出し、高品質で長く使える商品を提案することを目的とします。そのプロジェクトの中で、私たちは万年筆を製作することになったのです。
エボナイトは加工精度の高さだけでなく、インクの耐蝕性が高いことから、万年筆の素材として最適。プロジェクトの主旨にのっとり、一生飽きることなく使える万年筆づくりに取り組みました。
国内唯一のエボナイト棒・板の製造所として、エボナイトの製造から加工販売までを手掛けています。今では、プラスチックに代替されたケースが多いのですが、自然素材である天然ゴムと硫黄から作られたエボナイトは、絶縁性、耐薬品性、音響特性など、独自の魅力も有しています。工業製品だけでなく、生活の中で手に取っていただけるような商品を開発しています。
当社は荒川区の「モノづくり見学・体験スポット」に参加しており、工場見学を受け付けています。基本は学校関係や企業などの団体向けなのですが、詳細についてはホームページからお問い合わせください。
イベントに関しては、ホームページ上の「イベントスケジュール」に詳細を載せています。今年も、LAペンショーに出展しました。その他、日本橋丸善で「世界の万年筆展」、日本橋三越で開催する「世界の万年筆祭」に出展し、今年初めて阪急メンズ東京のステーショナリー売場で「笑暮屋フェア」を実施しました。
当社工場隣の万年筆ショップ「笑暮屋(えぼや)」でも当社の商品をご覧いただけます。手に取って、エボナイト特有の感触を味わっていただけたらと思います。
また、私自身は、町工場の連携を自主的に促進する異業種交流会「下町サミット」や、荒川区の若手経営者勉強会「あすめし会」の幹事を務めています。クリエイター同士の交流会も開いているので、モノづくりに携わる皆さんとご縁をつなぎ、未来を歩んでいけたらと思っています。
フリーライター。周囲の人や町の魅力を言葉で誰かに届け、私のあずかり知らないはじまりを作れたらと思います。明日が少し楽しくなるきっかけの時間「旅する図書館」というサロンをさまざまな場所をお借りして開いています。https://www.facebook.com/travelinglibrary.ultreya/