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2019.03.06
「続けることはやめないこと」──ペーパークラフトで空間を彩る4年目クリエイターのシンプルな信念

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株式会社ボグクラフト
田沼 恵司さん

組み立てる楽しさと飾る楽しさを味わえるペーパークラフトキット「KAKUKAKU」。モチーフの愛らしさとカクカクとしたフォルムが評判となり、お部屋のインテリアだけでなく、イベントのディスプレーに使われたりと活躍の幅が広がっています。

そんなペーパークラフトキットを開発し、販売まで手がけているのがbog craft(ボグクラフト)代表の田沼恵司さん。大手玩具メーカーを退職し、2015年に独立しました。今回は田沼さんに、創業にいたる経緯や現在の展開についてお話を伺います。

いつかディズニーランドに並ぶおもちゃをつくりたい

独立に至るまでの経歴がユニークで気になります…!

そうですよね(笑)。菓子職人だった父に影響を受け「技術を身につけて働きたい」と考えて美容師になりました。地元群馬県の美容室に就職したのですが、数年後に突然閉店。それを機に東京で働こうと決めました。

ただ、せっかく出るなら目標を定めようと思ったんです。そのときふと浮かんだのが「ディズニーランドに並ぶおもちゃをつくりたい」という思いでした。

もともと自分でなにかつくることが好きだったものの、モノづくりの基礎を知らなかったので東京のデザイン学校に通い、その後タカラトミーのグループ会社に就職しました。社員7名の小さな会社でしたが、タカラトミーのグループならいつか「ディズニーのおもちゃ」をつくる機会も来るんじゃないかと(笑)。

チャンスは意外と早く訪れました。グループの再編で入りたかった部署が同じ会社になったんです。これは言ったもん勝ちかもしれないと、上司や同僚に「実は、ディズニーのおもちゃをつくりたくて……」という話をしたら異動が叶いました。本当にやってみたいことがあれば、口に出すのは大事だなと思います。

異動先では、目標だったディズニーランドで販売されるおもちゃの企画もできましたし、生産現場についても学べました。その後、カプセルトイの開発部門に移るのですが、単価やサイズに厳しい制約がある中でのモノづくりに携われたことは幸運でした。

ただ、美容師として働いていた頃から、いつかは独立したいという気持ちがありました。これまでの経験を活かしたモノづくりをしようと2015年に起業しました。

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インテリアになるペーパークラフト「KAKUKAKU」が生まれた経緯を教えてください。

もともと、立体物をつくることに関心があったのですが、フィギュアをつくろうとしても金型からつくろうとすると費用がかさみます。金銭面や製造工程に制約がある中でも面白いものをつくりたいと考え、たどり着いた素材が紙でした。初期投資が少額で済み、加工もしやすい。

「KAKUKAKU WALL」は「ハンティングトロフィー」と言われる、動物のはく製をイメージしたペーパークラフトです。動物を傷つけることなく、お部屋のアクセントが簡単にできます。「紙のプラモデル」とよく表現しますが、組み立てる時間を楽しみながら、出来上がれば壁に飾るのも画鋲1本。お部屋のイメージに合わせて、サイズや動物の種類を変えて楽しめます。

独立して意識していたのは、何年も売り続けられるものをつくることでした。「次々と新商品を出す」という大企業の宿命から抜け出したんだから、しっかりよいものをつくりたいと思って。

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オフィスの壁面を飾る同社の看板商品「KAKUKAKU WALL」


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立体感が売りのKAKUKAKUですが、組み立てる前はこんなにコンパクト。かさばらず、海外の方へのおみやげとしても人気。

地道によいものをつくり、見てもらえる場に出かける

展示会に積極的に出展していますが、それがきっかけで受注が決まったことはありますか?

僕の場合、ほとんど展示会で決まります。営業が得意というわけではないので、地道に良いものをつくって、商品を見ていただける場に出ることで成果につながっています。

最近は、あるホテルからの依頼でロビーの装飾を企画することになりました。ホテルのバイヤーさんと出会った展示会では、「KAKUKAKU FLOW」の「錦鯉」を30個ほど使い、群れをなして泳いでいるようにディスプレーしていました。その展示を覚えていたそうで、後日声をかけていただいたのはうれしかったですね。

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展示会での展示。壁一面に錦鯉と金魚を配し、動きを感じさせるディスプレーに。

今年は、「東京ギフト・ショー」と「EXTRA PREVIEW」、「インテリア ライフスタイル東京」に参加予定です。何年か続けているうちに突然声がかかることもあり、同じ場所で長く続けることが信頼される秘訣かなと思います。

さまざまなブランドやメーカーとコラボレーションも展開していますね。

KAKUKAKUを仕入れた会社で売れ行きがいいと、「自社のオリジナルをつくりたい」というご要望をいただくことがあります。いわゆる別注品としてカラーリングを変えたり、完全オーダーメイドの場合もありますね。例えば、1分の1サイズの「コールマンランタン」。つくるのもかなり難易度が高く、コアなファン向けかもしれませんね。

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特注品の「コールマンランタン」

ビームス ジャパンとのコラボレーションでは、日本らしいシックなゴールドと、ビームスのコーポレートカラーのオレンジを使いました。コラボレーション商品は、ブランドの魅力のおかげで当社の商品が思わぬ方に届けられる面白さがあります。

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ビームスジャパンとコラボレーションした、「FLOW」シリーズの特別カラー展開


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KAKUKAKUフォルムになったムーミン谷のみなさん。どっしり座る姿がかわいい。

相談できる安心感と同業者からの刺激が東東京の魅力

台東区で創業してよかったなと思うことはありますか?

相談相手がそばにいる環境はありがたいです。先輩創業者も多く、何かと相談させてもらっています。台東区産業振興事業団には、東京都が管轄する創業助成事業の補助金や、日本商工会議所による小規模事業者持続化補助金といった助成金について、適用の条件や申請の方法など一から教えてもらいました。また、台東区には若い創業者が多く、別業種であっても刺激を受けますね。

会社設立から4年目になりますが、事業を続けてこられた秘訣はありますか?

ある人から、「続けることはやめないこと」という言葉をかけてもらって、それ以来大事にしています。シンプルな言葉が腑に落ちました。

ゴールが「やめない」だと、自分にウソをついたり、むやみに思いつめたりしなくなるんです。今の自分にできるのは、流行に巻き込まれない良いものをつくること。そして、商品を見ていただいたときの意見を素直に受け止め、さらに良いものをつくるという流れを続けていくことだと思っています。

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株式会社ボグクラフト
2015年創業。紙・段ボールを使ったペーパークラフトの商品企画、卸売り、小売りを手掛けている。組み立てるインテリア「KAKUKAKU」を中心に、“カクカクと洗練されたデザイン性”のある製品を通じて、”組み立てる楽しさ”を感じながら、組み立てていただいた方それぞれの “温かさ”が込められる製品を開発している。

〒110-0004 東京都台東区下谷2-22-1 ENDOU1
https://www.bogcraft.com/

取材写真:樋口トモユキ

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この記事を書いた人

岡島梓

フリーライター。周囲の人や町の魅力を言葉で誰かに届け、私のあずかり知らないはじまりを作れたらと思います。明日が少し楽しくなるきっかけの時間「旅する図書館」というサロンをさまざまな場所をお借りして開いています。https://www.facebook.com/travelinglibrary.ultreya/