犬専用アイテムのアトリエショップ
*sanpo*オーナー
相葉 香織さん
ブランドの魅力を広く知ってもらうにはどうすればいいんだろう?
この先、事業を大きくしていくために何をすればいい?
そんなモノづくり系創業者の不安や悩みを解決するため、2017年夏に開催された「クリエイター起業塾」。台東デザイナーズビレッジの鈴木淳さん(通称:鈴木村長)が講師を務めたこの塾には、ファッション・雑貨などモノづくり系のクリエイターが集まり、ひと夏かけて、ブランドの育て方や発信の仕方を学びました。
クリエイター起業塾は、今回が初開催。13人のクリエイターが第1期生として、全5回の講義を修了しました。そのうちの1人、東上野に犬専用アイテムのアトリエショップ「*sanpo*」(さんぽ)を構える相葉香織さんにお話を聞きました。
騒がしくてすみません(笑)
犬用品を卸している会社で働いていた2011年に、東日本大震災がありました。連日、ニュース等を見ているうちに「人生って急に終わってしまうんだな。自分のやりたいことを今やらないで、いつやるんだろう?」と考え始めたんです。震災から2カ月後にはホームページを作って、犬の洋服のブランドをスタートしました。すぐに動けたのは、以前から作りたい服のイメージやブランド名をノートに書き留めていたから。その後、ドッグカフェ勤務を経て、2014年に自分の店を構えました。
当初は、犬用品や、個人的に好きなキノコの雑貨をそろえて販売していました。店内でワークショップも開催するなど、あれこれ手を出しすぎしまって……。結局、店の運営が忙しくなってしまい、一番やりたかった犬の服作りがおろそかになってしまったんですね。
1年経った頃に「これではマズい」と思い、方針を変えて、犬用の鯉口(こいぐち)シャツを作るアトリエとして運用するようになりました。
私は8年ほど前から浅草に住み始めたんですが、祭りに参加するために鯉口シャツを着ているうちに、とても快適なことに気がついたんです。手ぬぐい素材で涼しいし、前開きの仕様なので楽に着られますよね。袖を通して前を留めればいいので、シニアのワンちゃんも着やすいのではと考えました。犬も年齢を重ねると筋肉が硬くなってしまうので、Tシャツタイプだと袖を通すとき大変なんです。
売り上げを伸ばすためのノウハウや、自分の商品を広める方法を知りたかったからです。今まではミシンで1着ずつ作っていたんですが、1日に2〜3枚しか作れないのがネックで……。受注が少しずつ増えてきたので、工場生産も視野に入れて、次の段階にステップアップしたいという気持ちがありました。
まずは課題に沿って、自分の事業について深く掘り下げます。その内容を1人ずつ発表して、鈴木村長や他の受講生からフィードバックをもらうというのが講義の流れでした。「ここを改善した方がいい」とか「こうした方がいいんじゃない?」と本音で意見を言ってもらえるのがすごく新鮮でしたね。私はフィードバックの際に「事業をどう展開したいか分かりづらい」と言われました。
事業内容を絞りすぎてしまっていたようです。鯉口シャツで勝負しよう、という思いが強すぎたんですね。鈴木村長にも「それだとコアなお客さんしかつかないよ」と言われました。飼い主全員が犬に服を着せるわけじゃないし、和のテイストが苦手な人もいますから。「和」という軸は崩さずに、より多くの人にアピールできるものを作っていくのが大事だと教わりました。
行き詰まったときの解決策を聞いたり、イベント出店の情報交換をしたりしました。悩んでいる部分はみんな一緒ですし、相談し合うことで結束力が強まった気がします。起業塾終了後も一緒にイベントに出るなど、受講生仲間とは今も交流が続いているんですよ。
全5回の講義を終えた後、鈴木村長との個人面談がありました。それまで、事業を貫くコンセプトをなかなか言語化できなかったんですが、個人面談で「犬と暮らす和雑貨店」というワードが出てきたんです。今後はこれをコンセプトに、事業を展開していこうと考えています。
畳を使った犬用のベッドなど、新しい商品を増やして、百貨店のバイヤーさんにアピールしていきたいですね。湿気に弱い犬にとって、日本はすごく住みづらい環境なんです。畳は、湿気を吸ったり断熱してくれたりする日本の気候に合った素材。そういう和の心地よさを飼い主さんに知ってもらい、快適に過ごせるワンちゃんが増えるといいです。
壁にぶつかって悩んでいる人は、受講してみた方がいいと思います。同じ立場のクリエイターに質問や意見をもらうことで、自分の問題がどこにあるか分かりますから。仲間と相談すれば、1人で考えるよりも答えが見つかりやすいんじゃないでしょうか。
東東京では、「浅草エーラウンド」や「モノマチ」など、街全体を使ったイベントが多いですよね。老舗の会社の方もイベントに参加していますし、新参者の私にも「一緒に何かやろうよ」と気軽に話しかけてくれるのもありがたいです。独立したてのクリエイターでも仲間に入れてもらいやすいのは、東東京ならではだと思いますね。
(写真:イシバシトシハル)
申し込みフォームはこちらから | デザビレ村長のクリエイター起業塾 第2期 *締切12/26 |
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東東京で創業者を育てるネットワーク Eastside Goodside(イッサイガッサイ)東東京モノづくりHUBは「デザビレ村長のクリエイター起業塾 第2期」を開講いたします。
主としてファッション、雑貨などモノづくり系クリエイターや、小規模メーカー向けに「事業やブランドを成長させる」方法を考えていくワークショップです。基本的には主要テーマ毎に、個人ワーク→グループワーク→講義によるまとめを繰り返していきます。一方的な講演ではなく、自分自身に向き合い、グループで考えていくプロセスを通じて、自分に合った成長法則を見つけ、実際に仕事で役立てていくことを目指しています。
従来デザビレの入居者だけに対応してきた鈴木村長が、外部のクリエイターや創業者を指導する貴重な機会です。ぜひ受講をご検討ください。
下町住まい7年目の雑食系ライター。仕事人の情熱を適切な言葉に落とし込み、必要としている人に届けることをめざし、トヨタOPEN ROAD PROJECTやコーヒーマシンのサイトにてコラム記事を執筆中。