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2017.04.12
モノづくりだけでなく、売り方までサポート──「DMM.make AKIBA」が取り組むベンチャーメーカー支援

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DMM.make AKIBA
企画運営プロデューサー 境 理恵さん(写真左)
エヴァンジェリスト 岡島 康憲さん

設備に5億円、機材に5億円。合計10億円という巨額の予算をかけて2014年11月に誕生した総合型モノづくり施設「DMM.make AKIBA」。設立当初から各メディアで大きな注目を集めました。この場所を出発点に選んだ様々なスタートアップやクリエイターが今、ユニークな製品を続々と生み出し、世界を驚かせています。

東東京、いや日本随一の電気街・秋葉原の一画で巻き起こる、モノづくりのイノベーションは、今や既存の大手メーカーやグローバルなIT企業も注目するほど。けれど、DMM.make AKIBAがスタートアップから圧倒的な支持を集めているのはなぜでしょう? そして、ここに入居した創業者がモノづくりを加速できる理由とは? 創業検討中の皆さんも、きっと気になりますよね。

そこで今回は、DMM.make AKIBAの立ち上げから参画し、現在は国内外での情報発信や事業企画などを手掛けているエヴァンジェリストの岡島康憲さんと、プロデューサーの境理恵さんに、そのヒミツをたっぷり伺ってきました。家電、製造機械、ファッションアイテムなどなど、あらゆる「モノ」をインターネットにつなぎ、画期的な製品を生み出していこう!という、”IoT(Internet of Things)”や “モノづくり”をキーワードに創業を考えている方は必見です!

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多種多様な工作機械から試験用の機材まで様々取り揃えた「DMM.make AKIBA Studio」

“IoTスタートアップ”に必要な環境を最大限そろえる

まずは「DMM.make AKIBA」という施設の特徴を伺えますか?

岡島さん  このDMM.make AKIBAが目指しているのは、「IoT領域のスタートアップ企業が集う場所」です。ただ、一口に“IoT”と言っても、実は非常に幅が広いんですね。

ハードウェアを扱う企業・団体・人もいれば、ハードウェアと連携するソフトウェアですとか、それを統べるクラウドサーバ側のソフトウェアを手掛ける人もいる。そうしたIoTに関わるあらゆるスタートアップの皆さんが集まり、ここで自分たちのプロダクトを開発したり、製品や技術の情報発信を行う拠点になればいいなと。

境さん 実際、環境づくりの面でも「創業期のメーカーさんや、スタートアップの方々が活動するために何が必要なのか?」を考えて形にしています。

例えば、打ち合わせや商談なども自由に行えて、入居者同士でのコミュニケーションも図りやすいコワーキングスペース「DMM.make AKIBA Base」ですとか、各種工作機械に加えて、部品や基板の実装が行える設備、試作の開発や検証・試験に特化した機材などを取りそろえた「DMM.make AKIBA Studio」ですね。

こういった様々なファシリティを、ほぼすべて利用可能な月3万円からの月額会員(Base Plus会員。その他プラン多数あり)や、1日(12時間)5000円で利用可能なドロップイン会員といった形式で有償提供し、ビジネスやモノづくり活動のベースにしていただけるようにしています。

会員登録は1時間程度の初回ガイダンスを受講していただければ、法人・個人を問わず、どなたでもOK。機器の使用方法などもレクチャーしますので、ウェブ系の女性エンジニアの方が、気付けば旋盤加工機などの工作機械をマスターしていた、なんてこともありましたね(笑)。

これだけの環境は、他ではなかなか存在しないのでは?

岡島さん おっしゃる通り、世界的に見ても、こうしたトータルサポートを手掛けるモノづくり施設は類を見ないと思います。実際、オープン当初から世界各地のメディアで取り上げていただき、海外のIT企業やグローバルメーカーの視察も少なくありません。

そうした評判が国内のモノづくり業界にも広がったのか、現在は既存の大手メーカーさんがブランチとしてご入居いただくケースも増えているんですよ。

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「既存メーカーさんの入居は、スタートアップにも、私たちにも非常にプラスになっています」と境さん

流通・販売の支援サービスやスカラシップ制度も用意

スタートアップだけでなく、大手企業も入居しているんですか?

境さん そうですね。入居者の方は、「IoT×ウェアラブル」「IoT×ロボット」「IoT×VR」といったテーマのスタートアップを中心に、個人のクリエイターの方や中小企業の方もいますし、大手企業の新規事業開発部の方もいらっしゃいます。既存メーカーの場合は、「ベンチャー企業と一緒にオープンイノベーションを目指したい」「将来を見据えてスタートアップをサポートしたい」など、入居の理由は様々ですね。

岡島さん ただ、我々としてはあくまで「IoTスタートアップがメイン」ですので、大手企業や異業界の入居者の方々には、「一緒に応援していきましょう」と協力を仰ぐようにしています。

創業者の方が何か課題を抱えていて、それを解決できる存在が大手メーカーを含めて入居者の中にいらっしゃると分かれば、私たちが間に入って関係性を取り持つこともありますね。その結果、品質向上などの化学反応や、5年10年先も一緒に切磋琢磨できる人間関係が生まれると非常にうれしいんです。

ちなみに、IoT分野以外の入居者の方もいらっしゃるのでしょうか?

岡島さん いらっしゃいますよ。例えばファッションデザイナーの方とか。

ファッションデザイナー!それは想定外のジャンルですね。

岡島さん 実は入居者の多様性を生み出す仕組みとして、DMM.makeでは「スカラシップ制度」というものを用意していまして。資金面でのバックボーンを持たない、若手や学生のエンジニア、クリエーター、デザイナーなどの中で「この施設に興味がある」という場合に、どういうものを作りたいのか、どんなコンセプトを持っているのかを聞き取ります。その中から趣旨に合う方を採択して、施設・設備の無償提供などの支援を行っているんです。ファッションデザイナーの方も、この制度の対象者ですね。

境さん 他にも支援のカタチは様々あります。ここで活動されているスタートアップの皆さんは、「モノを作る」部分にフォーカスしている方が大半で、「モノを売る」という行為に関しては未知の世界という場合が少なくありません。

そこで、ユニークな製品をDMMのウェブストアなどを活用して広く国内外のマーケットに流通・販売する支援サービス「DMM.make Distribution」のチームにつないだりしています。

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「クラスタの異なる方々が出会い、新しい化学反応が生まれるシーンも珍しくないですね」と岡島さん

東東京の魅力は「世界にとても近い」こと

DMM.make AKIBAの入居者の中で、事業拡大に成功したスタートアップの事例などはありますか?

境さん アイデアを製品化し、マーケットで注目を集めているスタートアップは多数出ています。また、事業成長に合わせてこの施設を卒業した会社もすでにあります。バーチャルホームロボットの「Gatebox」をリリースした株式会社ウィンクルは、その代表例と言えるかもしれません。

岡島さん 「Gatebox」は“好きなキャラクターと一緒に暮らしたい”という創業者の想いを形にしたデバイスで、ホームオートメーションといった基本の文脈をしっかり押さえながらも、企画の面では非常にエッジが効いている。こうした万人受けはしなくても、尖った製品づくりが実現できれば、その魅力は海外にも伝わる時代です。実際、「Gatebox」のグローバルマーケットでの予約販売は多くの人に受け入れられ、完売していましたね。

スタートアップの製品が、海外マーケットでも火がつくというのはすごいですね。

岡島さん ここ秋葉原を含めて、東東京って物理的な意味で世界とすごく近いと思うんです。なにせ、羽田空港と成田空港がとても近い。上野駅から成田空港を目指すなら、飛行機への搭乗を含めて、最短乗り換え1回で香港まで行けてしまいますよね。

たしかに考えてみれば、「上野→成田→飛行機」で、そこはもう海外です。

岡島さん これは、モノづくりにおいてもビジネスにおいても非常に強みになるんじゃないでしょうか。例えばハードウェアの製造や量産工程のために、メーカーの方が中国・香港に出向くケースは多々あります。また、ビジネスのために欧米に行くシーンも少なくない。

それに、海外の取引先の方を国内に招く際にも、「成田に来たらとりあえずスカイライナーに乗って終点まで来てください」と伝えれば、そこはもう上野じゃないですか。アクセスの良さと分かりやすさは、日本に不慣れな方に安心感を提供することもできますよね。

東東京は、世界との関係性を育むのに便利な地域でもあるんですね。

岡島さん 私自身、急な海外出張などもあるのですが、住まいは東京の西の方で。成田までの移動時間ですとか、始発に乗れば座って仕事をしながら空港に迎えることとか、そういった「海外に行くまで」を考えるだけでも、本当に東東京はうらやましい環境です(笑)。

様々な技術を持った町工場もたくさんありますし、モノづくり系のスタートアップにとっては本当にいいエリアだと思います。

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DMM.make AKIBA(株式会社DMM.com)
DMM.make AKIBAは、シェアオフィスやイベントスペースなど、ビジネスの拠点として利用できる「DMM.make AKIBA Base」とホンモノの機材でプロトタイピングを可能にする「DMM.make AKIBA Studio」で構成された、ハードウェア開発をトータルでサポートする総合型のモノづくり施設です。モノを作りたい人が必要とする、全てをご用意しました。

〒101-0022 東京都千代田区神田練塀町3 富士ソフト秋葉原ビル
https://akiba.dmm-make.com/
*各種お問い合わせは、上記サイトの「お問い合わせはこちら」ページ内のフォームより受け付けております。

この記事を書いた人

太田将吾

ライター/コピーライター。これまで求人・採用などキャリアデザイン関連が中心だったが、最近はテーマがライフデザインに拡大。ユニークな企業・団体・人との出会いが増え、「趣味=取材」の公私混同系ライターとしては楽しい毎日。