東東京で活躍する方々の仕事現場におもむき、創業の体験談や東東京の魅力をお聞きする訪問型セミナー「Speak East」。昨年開催したSpeak East Vol.1〜4では、東東京で話題を集めている4つのスポットを訪問。KONCENT、MERIKOTI、book cafe SENJU PLACE、カキモリをセミナー会場として、先輩起業家である各オーナーからリアルな創業体験をお聞きしてきました。
今回のSpeak East Vol.5では、独自のセンスを生かしたリノベーションで話題を呼ぶ工務店、東上野にあるゆくい堂を訪問。代表取締役である丸野信次郎さんにお話を聞きました。
【会場】
ゆくい堂(東京都東上野4-13-9 ROUTE89 BLDG.)
http://www.yukuido.com/
【ゲスト】
丸野信次郎 氏 (ゆくい堂株式会社)
【ファシリテータ】
鈴木淳 氏 (台東デザイナーズビレッジ 村長)
【タイムテーブル】
18:30−19:00 会場受付
19:00−20:00 トークセッション
20:00−20:30 質疑応答
20:30−21:00 交流会
トークセッションの会場となったのはゆくい堂のオフィスがあり、自ら手がけたROUTE89 BLDG.の2Fにあるイベントスペース。貴重なお話を聞こうと、リノベーションや創業に興味がある方を中心に約30名が集まりました。まずはデザイナーズビレッジ村長の鈴木さんのファシリテーションの下、ゆくい堂のルーツを探るべく丸野さんの若い頃の話をお聞きしまた。
“工務店の親父”と自称する丸野さんは、鹿児島県出身。勉強のできないごく普通の少年だったという丸野さんは、福岡への進学を経て東京へ。当時はバブル絶頂の時期。「何になりたい」という想いもないまま、肉体労働のアルバイトなどをして過ごしていました。
ひたすら「面白そう」「美味しそう」など、心の琴線に触れたことを、なんでもやってみる日々。全力で遊びや仕事をしながら、26歳で開業するまで、自分のやるべきこと、やりたいことを模索したそうです。
ゆくい堂がリノベーションを手がけるようになってからすぐの事例が、今や清澄白河のカフェブームのシンボル的な存在にもなっている「fukadaso」。
大々的なリノベーションを希望したオーナーに「このままの方がいいですよ」と提案。素人目ではとても勇気ある提案だが、丸野さんは「他社と同じ土俵で同じものを提案してもしょうがない。僕たちだからできる提案を常に考えている」と言います。一方、デザインだけでなく、物件の利回りや投資回収時期なども綿密に検討。将来的な物件のあり方まで含めた提案は、オーナーの心も動かしました。
オープン後のイベントに丸野さん自らが知り合いに出展をお願いするなど、単なる物件のリノベーションではなく、場の魅力づくりまでサポート。結果的に、ゆくい堂の代表作のひとつとなる快適で魅力的な空間が生まれました。
トークセッションが終わると質疑応答の時間に。「コンテンツを考える時にマーケティングデータは取るのか?」という質問には「特にしていない」と即答。「ここには、こういう場があったら素敵だよね」という感覚を第一に、向かうべき方向が決まったらひたすらに質を磨き上げていくのだそうです。
ROUTE89 BLDG.に入居するブックストアも同様で、“本屋”という性質上、世代を超えて多様な人が集える場になる予感があったとのことです。
セミナー終了後は改めて、イベントスペース階下にあるカフェ&ブックストアや、小路を挟んだ向かいにある元メッキ工場の作業場などを見学。丸野さん自らが案内役となり、作業場2階にある事務所スペースも見学させていただきました。
セミナーには創業支援施設「台東デザイナーズビレッジ」の卒業生であり、今年3月にROUTE89 BLDG.に入居した革製品ブランド、m.ripple村上裕宣さんの姿も。セミナー後には、「空気感がすごく良くて、内見してすぐ決めた」というお店をご案内いただきました。
セミナーの後は丸野さんの提案で、バーベキューにて懇親会。東上野に移ってきた当初も、地域住民の方々を招いたバーベキューで仲良くなるきっかけをつくったそうです。丸野さんはリノベーションのプロであると同時に、もてなしの場づくりのプロであることを再認識しました。
ビール缶の上に鶏一羽を立てて丸ごと蒸し焼きにする「ビア缶チキン」は迫力十分! 美味しそうな見た目に引かれて、参加者の方々が夢中になってシャッターを切っていました。
バーベキューのプロが焼き上げる質の高い料理の数々に舌鼓を打ちながら、丸野さんと聞きそびれた質問の続きをする姿もありました。
盛りだくさんの楽しい時間はあっという間に終了。最後には参加者のみなさんで記念撮影。今回もたくさんのご参加、誠にありがとうございました!
コピーライター。群馬県桐生市に住み、東京とのデュアルライフ実践中。ものづくり支援が盛んな東東京の先進的な取り組みを、繊維産地である地元企業のブランディング、販促支援にフィードバックすべく送り込まれたスパイ。